2012年2月20日月曜日

松井冬子展をみてきました。

ずっと、展覧会などの感想も書いていなかったので、久しぶりに記録しておこうかと・・・

横浜美術館で、2012/3/18まで開催されている、「松井 冬子 展 世界中の子と友達になれる」を見てきました。

何年か前、今回の展覧会のサブタイトルにもなっている「世界中の子と友達になれる」という作品をみて、印象に残っていて、その後、ときどき見聞きするようになった日本画家なので、見に行ってきました。

精神的な世界を表現しようとしているのはわかるものの、 全体的に不気味な感じのするものが多いです。

ルドンやムンクなど比較的不気味な感じの作品は好きなものの、痛みや鬱屈した情念のような内面にあるものを、さらけだすような意味合いで内蔵が描かれたりしているところが、あまりに直接的というかグロテスクで私の好みではありませんでした。

また、デッサン画なども、かなり緻密に描かれたものも展示されていましたが、なんか惹きつけられる感じがしませんでした。
特に人物の肉体的な表現はバランスが悪い感じがしました。それも狙いなのかもしれませんが。

とはいっても、
「世界中の子と友達になれる」の他にも、「ただちに穏やかになって眠りにおち」、「この疾患を治癒させるために破壊する」などは、不思議な静寂感と多少の不気味さのある世界が描かれていて、いいと思いました。

最近の現代アートとの関係もあってか、言葉による表現と画との対応が無理やりというか強引な感じがして、タイトルも、絵の説明もなんだか意味がよくわかりませんでした。

2012年2月11日土曜日

すべてはどのように終わるのか を読みました

すべてはどのように終わるのか―あなたの死から宇宙の最後まで(クリス・インピー著、小野木明恵 訳、2011.1発行)を読みました。

タイトルからして、なんの話なんだろうという感じの本ですが、なにごとにも最後はあり、人や人類、太陽系や宇宙までも終わりをどのように迎えるかについて、現在の科学的知見をもとに書かれた本です。

最初の2章は、人の死というものについての話です。人の寿命や死因、各種要因による死亡の確率、他の動物との比較などを、科学的なデータを交えながら、現在わかっている知見に基づいて、 細胞の分裂や再生、加齢、さらには不死を目指す話題についても含めて、人の終わりに関した話が書かれています。
続く3から6章では、人類というかヒトという種の成り立ちから、生態系、生物圏の今後について、過去に起きた気候変動やテロなどの文明の発展自体に潜む危険性や、隕石衝突による生物発生と虐殺の可能性まで、さまざまな話がされています。
 7章からは、太陽系の成り立ちや終焉、さらに銀河や宇宙がどうなっていくかについて、宇宙や銀河、星や惑星などの、生成から終焉まで、ここ10年以内に大きく進展してきている知識を含め、話がされています。

全体的にイギリス人によく見られる皮肉っぽい一言が多く、特に、最初の部分は 人の死という、一見重々しい話題を扱っていることもあるのか、死因と確率の部分などの話も皮肉っぽいけどウィットに富んだともいえる語り口で、エッセイ風に書かれています。
後半は、一般向け科学書も書いている天文学者らしく、宇宙論に付いてわかりやすく書かれていて(よくわからない部分も多々ありますが、なんとなく分かったような気になります)、ひも理論や多次元宇宙の議論までざっとですが網羅しています。
とはいっても、最新の予測によると銀河をはじめとしたこの宇宙は、とてつもない時間後には冷めていき、ほとんど輝かない星が広大な空間に離れて存在するだけになってしまうような終わりになるようで、少しさみしい感じ。

あと、生物の発生は非常に偶発的なものではあるが、莫大な数の星やこれまでの経過時間などを考えると他の星に生物がいてもおかしくないというか、可能性としては存在していると考えるほうが自然といった話も、一歩間違うと宗教的議論になることも気にしつつ、科学的知見をもとに書かれています。
宇宙的な時間から考えれば、そのような存在が微生物と人間以上に進化の過程で差があってもおかしくなく、進化レベルの差を考えると、そのような存在が見られないほうが不思議という議論や、人間原理などの話は前にも聞いたことはあったものの、私たちの今の存在や認識自体がそのような進化した存在が行なっているシミュレーションの一部に過ぎない可能性などの議論は初めて知り興味深かった。

まあ、人や生物の始まりや終わり、さらに宇宙や星の始まりから終わりまで、一通りかかれていて、真空のゆらぎから宇宙が始まったあとに、生物を構成する重要な要素である炭素原子をはじめとした様々なものが星のなかで作られ、爆発とともに広がるといったことを135億年ほど繰り返すことで、惑星の上に生物ができ、その生物圏でも様々なことが起きたことについて、広く見渡せる感じの本です。
わかりにくい部分も一部にありますが、比較的読みやすく、それなりに面白い本でした。