2010年6月29日火曜日

オルセー美術館展2010を観てきました。

国立新美術館で開催されているオルセー美術館展2010[ポスト印象派]を観てきました。

オルセー美術館というと、日本人にも人気の高い印象派などの近代絵画を多数揃えた美術館。これまでも何回か、国内でオルセー美術館の展覧会もありますが、今回は115点が展示され、これまでの展覧会と比較して倍近い数だそうです。
個人的にはピカソ以降というか芸術の中心がパリから米国に移っていったとされる頃の作品に好きなものが多いのですが、印象派より現代に近いポスト印象派とタイトルにあるし、今回はオルセー美術館の印象派の展示室改修に伴い多数の作品が巡回し、日本初となるものも多いということなので、観てみようと思いました。

展示は割と細かく分類されていて全部で10章、印象派を経てそれぞれが独自の特徴や画風を模索した自体らしく、主に作家別に分けられたような構成でした。
順に
1章は、ポスト印象派世代の画家が登場してきた1886年に開かれ最後となった第8回印象派展の作家から、印象派展を始めたモネやピサロをはじめとする印象派を中心としていて、モネの作品が5個とドガやシスレー、ピサロなどの作品が展示されていました。
2章はスーラと印象主義と題して、最後の印象派展にピサロの推薦を受けて出品したスーラやシニャックの作品を中心としていて、点描画の良いものを多く観ることができます。
3章はセザンヌとセザンヌ主義ということで、セザンヌを中心に、その影響を受けたゴーギャンやピカソなどの作品が展示されていて、
4章以降は時期的にも印象派展以降のものとなり、4章ではロートレックということでロートレックの作品3点を、5章ではゴッホとゴーギャンということで二人の特徴的な作品をみることができます。
6章ではゴーギャンが訪れたポン=タヴェンというブルターニュ地方の村で出合った平坦な色面に強い輪郭線といったクロワゾニスムという手法で描いていたベルナールをはじめ、ポール・セリュジェなどの作品が展示され、
7章ではナビ派と題して、セリュジェやドニらが結成したナビ派の作品が展示されていました。平面的な色彩や装飾的な画面が特徴的で、縦長の作品など、日本の浮世絵の影響を感じられます。
8章で内面への眼差しと題して、ナビ派でも、作品の題材を日常に求め、家族などの集う和やかさだけでなく、心理的葛藤や孤独など感情を表現し、親密さを探求したボナールやヴュイヤールなどの作品や、眠りや瞑想といった主題などにナビ派への影響が感じられる、モローやルドンなどの作品が展示されていました。
9章では、独学で独自の空間表現や色彩効果のある作品を残し、ピカソらに賞賛されて、後の作家に影響を与えたアンリ・ルソーの作品が2点
最後の10章では装飾の勝利と題して、ナビ派が幅広い造形活動に携わることによって、絵画と応用芸術の垣根を取り払おうとして、装飾や壁画を問い直そうとして作成された室内装飾画など規模の大きいパネル画が展示されていました。

人気のある展覧会なようで、わりと混んでいて、落ち着いてみにくいところもありましたが、スーラの作品やシニャックなど多数の点描画をみることができ、その独特の雰囲気と色彩の明るさが印象に残りました。個人的には、抽象表現主義のような大型の平面作品が好きなものの、あまり装飾的なものは興味がないこともあって、良い作品が多数展示されているとは思いますが、好きな作品はあまり多くなかったのが少し残念でした。最も、展示概要から予想はしていましたが。

とはいえ、今回見た中で目を惹くものも多く、
ゴッホの「星降る夜」は夜空の星と街灯や水辺に映る光が独特のタッチで表現されていて、荒い筆触で描かれた夜景のような全体が暗いものを描いたものはあまり覚えがなくて印象的でした。
ルドンの「目を閉じて」は、瞑想する女神のような顔(綺麗な顔立ちというわけではないが)にどうもひきつけられてしまいました。水平線のかなたに画面いっぱいの半身なので非常に大きいことになりますが、その不自然感も含め、ルドンらしい奇妙さと内面を探るような作品だと思いました。本などで見かけても、それほど興味を惹くものではなかったのですが、本物はとても良かったです。やはり大きさとか実際の色あいやタッチなどから印象が大きく異なるものだと思いました。
モネの「ロンドン国会議事堂、霧の中に射す陽光」は靄に低い位置の陽光が射して赤靄に包まれた、まさにその印象を描いたようなもので、こういう全体がぼやっとしていて微妙に色彩が変化する絵が好きなので、とても惹きつけられる作品でした。

また、モローの「オルフェウス」やルソーの作品も気に入りました。

見所としても、
ドニのセザンヌ礼賛など、美術史的にも展覧会的にも重要と思える作品がたくさんあります。

2010年6月25日金曜日

カンランシャ を読みました。

伊藤たかみ著、カンランシャ(2009.6発行)を読みました。

内容は、学生時には先輩後輩の関係で、以前は同じ会社に勤めていた直樹と隆一、直樹の部下から妻になったいずみ、その3人が中心の話です。
妻の浮気から別居中の隆一が、直樹のメールを密かに転送して浮気を知ったいずみから、直樹の不倫について探りを入れてもらったことをきっかけに仲を深めていくといった内容。

冷めてしまった気持ちと新たな恋への期待するような気持ちや、割り切れなさや踏ん切りのつかなさなどが描かれ、若いときの突き進むような恋とは違った恋愛話といったところです。

気持ちが離れたからといって、まったく嫌いになったわけではなく、積み上げた思い出に対する想いや、愛しさ、日々の寂しさ、などで揺れる気持ちが描かれているように思います。

2010年6月20日日曜日

あの空の下で を読みました。

ずっと更新していなかったのですが、また、読んだ本の感想などの記録でもしようかと思います。

とりあえず、先ほど読み終わった本です。吉田修一 著、あの空の下で(2008.10発行)

内容は、
ANA機内誌に2007から2008年にかけて載せられていた短編小説とエッセイを集めたもので、
2本の小説ごとにエッセイが挟まれていて、12本の小説6本のエッセイが集められています。

小説は、ちょっとしたきっかけで、過去の出来事を回想するような話が多く、どれも、さらっと読めるけど、共感というか、なんか切ない感じや、ほっとするような感じなどを受け、良かったです。
エッセイは機内誌らしく、外国の都市にいったときの様子や風景から受けた印象などが書かれています。

機内誌は大抵暇つぶしに読むので、時期的にはいくつか読んでいると思うのだけど、読んだような気もするのはいくつかあったもののの、これは読んだことあるなと思えたのは1つだけでした。
情景や内容は感情移入しやすくていい小説だと思いますが、逆に、ストーリー自体はさらっとしてるので、どこかで聞いたようなありそうな話として、記憶にはっきり残らないのかもしれないです。
単に私が忘れっぽいという話もありますが・・