ときどき、思い出したように書いてはそれっきりになってしまいがちですが、引き続き読書記録ということで、
吉田修一 著
ひなた (光文社文庫)
を読みました。
大手ファッションメーカーに勤め始めた元ヤンキーの新堂レイと、その彼氏の大路尚純と兄夫婦、それぞれの視点から書かれた、春から冬の出来事。
明るく幸せそうな家族が、結構複雑な事情を抱えていることが後半に明らかになるなど、多少の展開はあるものの、全体的に淡淡と描かれています。
複雑な事情の中、人には見せない意地やプライドなどを生きていくうえでの支えとする様子、仕事に充実しながらも忙殺されると、何のために働いているのかと思ったり、逆に主婦としての幸せな時間をすごせるのは愛し合っているからなら、愛され続けなくてはいけないのかと思ったりする様子などが印象に残りました。
生きることや働くことなど、幸せは他人とのかかわりで生まれるものの、それに疲れもする誰もが持つであろう悩みが、特に解決するでもなく、漠然としたまま残る感じ。
それでも、読みやすく、どこか淡白で微妙な距離感の人間関係が織り成す現代的な雰囲気を感じる作品です。
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