アート・ヒステリー ---なんでもかんでもアートな国・ニッポン
(大野左紀子 著、2012.9発行)を読みました。
先日読んだ、アーティスト症候群―アートと職人、クリエイターと芸能人
の著者の最近(といっても1年くらい前)の著作。前作が歯に衣を着せぬ容赦なさが爽快だったので、読んでみることにしました。
アートっていうとなんか自由で個性的でカッコイイみたいなイメージで、さまざまなものがアート呼ばれたり自称している一方で、アートって良くわからないという声も多い。
そのような声に、アートの見方を解説するのではなく、少し距離を置いて、アートの成立や市場、社会との関係を含めたアートが置かれている状況、日本でのアート教育の変遷と現状など、アートを取り巻く環境や社会的位置、教育も含めた認知状況などが書かれています。
語り口は平易でありながら、前作と同様批判するところは厳しく批判していますが、本作は前回より構成がしっかりした評論本の趣。
アートは自由にみて好きなように感じればいいなどと言われたりするけど、背景や歴史を踏まえて、自分の中あるいは社会の中にある価値観を揺さぶるものなので、背景に関する知識の有無はアートを楽しむのに必要だし、自由に見るという見方も歴史的背景を踏まえて今日隆盛しているのだと思いました。
アートも民主主義や資本主義、商業主義から逃れて存在するものではない状況は、個性重視といいながら、個性そのものも我侭と差異がなくなってきたりする現在の社会的状況に通じるものがあるのかなど、アートと個性、自由、といったことを考えました。
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