2013年7月5日金曜日

アーティスト症候群

アーティスト症候群―アートと職人、クリエイターと芸能人 (大野左紀子、2008.2発行)を読みました。
巷に自称アーティストが溢れている状況に対し、以前は自分も(美術作品を作る人としての)アーティストであった著者が、アーティストという言葉をこうも聴くようになった背景や、なぜアーティストと名乗るのか、そう名乗っているのはどういう人かについて書かれています。

もう、5年以上前の本で、多くの人がアーティストって響きに憧れ流行っていたころほど、アーティスト=なんか箔があってかっこいいイメージ、とは言い切れなくなってしまっているものの、本書のなかでも触れられているクリエイターという言葉など、多少形を変えながらも、自由に好きなことをしながらも一目置かれるような雰囲気を持つ用語を、多くの人が便利に使い、さまざまな横文字職業が増えている今の様子は、自分を差別化し認められようとアーティストが多用されるようになったのと変わらないように思います。

他から認められたい、他とは違って格好いいとか、偉いとかって思われたいけど、そうそう他より抜き出るのは難しく、アーティストといってしまえば、よくわからないけど凄そう、みたいな感じになる、そんな状況を的確にとらえ、背景を分析しています。
また、芸能人のアーティストに対しても容赦なく、そこまでいっていいの?という感じの皮肉まじりの論評がされています。

アーティストおよびアートという言葉が使われている様子についての、芸術家でもあった著者自身の考えからの論評ともいえますが、著者自身のアーティストになるまでやなってから、予備校講師のときの体験、そしてアーティストをやめた理由もかかれ、美術大学を目指す学生の様子や予備校業界の裏話的要素もあり、楽しく読めました。

        

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