2009年1月13日火曜日

奇蹟のエコ集落 ガビオタス を読んだ。

アラン・ワイズマン著、奇跡のエコ集落 ガビオタス(2008.12発行)を読んだ。

このところの流行に乗っているような気がして少し嫌なのだけど、農業などの自給自足や、太陽エネルギーなど環境にやさしい、持続可能な生活に興味が向いていて、環境分野のところで新刊を観ているうち、コロンビアの不毛な土地で、食物からエネルギーまで自給自足を目指し、環境技術を開発しながら、持続的生活を目指した集落についてのこの本に興味を持った。また、著者のアラン・ワイズマンは、人類が消えた世界という、人類が突然いなくなったとしたら、建物や文化的なもののほとんどは数万年のうちに消えるが、化学物質や放射性物質などは影響を与え続け、そのような環境下で生態系はどうなっていくかといった、人類がいなくなった未来を予測した本を書いて世界的ベストセラーになっているようで、読んでないのでわからないけど、そのような著者が書いた本でもあるので、読むことにした。

内容は、理想的な文明を設計しようと、人類の増加により今後厳しい土地にも住むことになる可能性が高いことと、条件の厳しい土地に作れれば他でも可能だろうということで、コロンビアの首都ボゴタから東に離れた、政情も不安定で不毛な土地に、科学者や学生などを巻き込み、水耕栽培や太陽エネルギーを活用する環境技術を試行錯誤で生み出しながら、持続的で自立的な社会を目指す集落ガビオタスを形成しコミュニティとして維持してきたことについて書かれている。
ガビオタスの成り立ちや、機能し続けるために必要な資金の獲得などの現実的な問題、製造時のエネルギーやコストに保守の必要性なども含めた環境技術の検討の様子、国連やNPOなどとの関わりなど、維持していく上での困難などを乗り越えながら、設立者や関わった人々の努力やなどが書かれたノンフィクション。

自然と共生しつつ、技術を排斥するのではなく、サスティナブルな技術を開発しながら広げていくエコ集落、このところの経済破綻やエネルギーや環境問題から、こういった集落は再び注目を浴びるだろうし、私もそういう生活は興味がある。しかも、条件の悪いところで出来たのなら他ではもっと用意に持続的な社会ができるのではないかとも思えるし、現状の急ぎすぎて、規則やお金などで縛られ精神性が失われてしまっている社会ではなく、人がもっと幸福感を感じながら生活できる社会を実現するうえでも、参考になるような気もする。

ただ、技術開発は試行錯誤的で、自前で何でも行いいろいろ工夫するのは楽しいとは思うけど、発展途上国の文明化への寄与という点ではなく、人類が必要とする将来の文明形態がどうなるかという観点で考えると、例えば、量子力学の実験的検証設備を作るような先端科学技術とはかなりの開きがあるし、つながっていく方向性も見えなくて、人類全体の発展という点ではそのような社会でいいのかとも思ったりした。(最も、そういう比較をするつもりはないのだろうが)
現在の科学技術の発展速度が、環境などを無視していて破綻するから、破綻しない範囲で技術進歩を進めていけばいいという考えや、人口の多くは日々の生活を楽しめればいいのだから、自然と共生した穏やかな生活をするような社会を少しでも増やしていけばいいという考えもあるのだろうけど、なんか、完全には賞賛し切れない気がした。
ただ、いろいろな価値観が世界に伝わるくらいに確固として成立するのは、いいことだと思うので、これまでと同様、人的、金銭的、政治的危機を乗り越えて、ガビオタスの社会が持続していくことは重要だとは思った。

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