2009年4月22日水曜日

阿修羅展をみてきました。

先日(4/17)東京国立博物館で開催されている「興福寺創建1300年記念 阿修羅展」を見てきました。

その憂いのある少年の顔と三面六臂の独特の姿でとても有名な阿修羅像は、私も好きな仏像のひとつ。その仏像が見られ、同時に興福寺にある八部衆と十大弟子の仏像が露出展示されるとのことで、普段は興福寺までいってもガラスケース越しに、ほぼ正面からしか見ることが出来ない仏像たちを良くみることができるそうなのと、知り合いからチケットをもらったこともあったのでで観に行ってきました。

展示は、3章構成。
第1章は「興福寺創建と中金堂鎮壇具」、興福寺の中金堂基檀中から出土した、創建時に地鎮のために埋納されたと考えられる鎮壇具類を最近の発掘調査での出土品も含めて展示されていて、ケース越しの展示と、水晶筒や唐草文鋺などいくつかのものは、薄型テレビによりハイビジョンでの説明もありました。
第2章が「国宝 阿修羅とその世界」、第1章の展示室から移動していくと途中に、国宝の法隆寺阿弥陀三尊像とその厨子、華原磬(金鼓)、などがあって、次の部屋に入ると右側に十大弟子像が、左側に八部衆像が並んで展示され、その部屋を出ると、阿修羅像がスライドショーされている手のひらサイズの画面画並んだトンネルがあり、それを抜けて進むと阿修羅像を拝顔できます。阿修羅像は高めの位置と、像の近くを回りこんでみることが出来るようになっていました。
第3章は「中金堂再建と仏像」、展示室に入ると、 見上げる大きさの持国天をはじめとする四天王像があり、その先に、さらに大きな薬王菩薩像。その隣には薬上菩薩像があって、他に、釈迦如来像頭部などが展示されています。最後の部屋では、VRシアターとなっていて、興福寺中金堂を再現した場合の様子や、阿修羅像を大型スクリーンで上映していました。

最初の宝物類は国宝だらけで、資料的にもきっと非常に価値の高いもののように思われます。しかし、奈良時代といった昔に、水晶を緻密に切り出したり、装飾を施した杯などをどのように作ったかなど、考えると興味深いところもありますが、展示品自体はそのような技術や歴史的背景などを知らない私には価値がよくわかりませんでした。

法隆寺の所有する阿弥陀三尊像は伝橘夫人念持仏ということで、八部衆や十大弟子像、華原磬は光明皇后が亡き母橘三千代の一周忌供養のために作ったものだそうで、橘夫人とのつながりで特別出品されているようです。
この三尊像は比較的小さいのでケース越しで近寄れないこともあり良く見えませんでしたが、面長で角ばった顔の仏像で、背景などが細かく装飾されているような感じで、隣に展示されていた華原磬も竜の彫刻が優美な感じのする見事な鳴物だと思いました。

八部衆像はもともとはインドの神様なので、阿修羅像の三面六臂をはじめ、角や牙など人とは違った特徴を持っているものが多く、特に迦楼羅像は伝説上の鳥が神格化したものらしく、嘴や鶏冠を持っていて、とても変わった仏像で、この像は以前なにかでみて気になっていたので、見ることができてよかったです。
十大弟子はどれが誰かとかは書いてあるけど覚えられないのですが、それぞれ幼い顔をしたものから落ち着いた感じのものなど異なった顔立ちで、それぞれ、仏の道を歩む仏弟子たちらしい徳の高い僧といった感じがしました。
どちらも台の上に載せられて露出展示されているため、横に回り込んでみることができ、正面のほうからだけでなく、横や斜め後ろからもみることができ、普段はみることのできない方向からもみることができ、よりお近づきになれる感じでした。

阿修羅像は特に今回の目玉でもあり、阿修羅像のみで一つの展示室になっていて、部屋の片側のスロープを下りながら、部屋の中ほどに展示された阿修羅像に近づくようになっていて、やや高めの位置からみることができ、さらに、像の周囲どの方向からもみることが出来るため特に背面など普段見られないし写真等でもあまり見かけない方向からみると、像から受ける印象も異なり、いろいろな感じを受けました。
また、三面の顔は違っていて、正面の憂いのある少年の顔と比較して、両側の顔は表情が抑えられた感じですが緊張感のあるような顔に感じられました。
阿修羅像をはじめとするこれらの仏像はどれも、天平年間に作られたもので、表情が写実的で人間味が感じられました。(八部衆は人間ではないですし、鶏の顔していたりしますが)

中金堂を再建した際に移される予定の仏像たちは、鎌倉時代の作で顔立ちは私のもともとある仏像のイメージに近く、見慣れた顔つきの仏像だと思いました。
四天王は康慶作で、邪鬼を踏みつけ懲らしめている像はその大きさもあって迫力があるものでした。また、薬王・薬上の両菩薩像は3mの大きさとのことでしたが、台座の上に載っていることもあり、かなり大きい印象を受け、2対を並べてみると、薬師寺展でみた日光・月光菩薩像を思い出しました。今回のものは、木製で漆や金箔で仕上げているので、年数をへた痛み方や仏像としての印象はかなり異なりますが、控えめの照明のなかで見上げるほど大きい仏像2対が並んで配置されていて、どちらも荘厳な印象を受け敬虔な気持ちになります。

阿修羅像をVR技術によりデジタル化したものや、現存しない中金堂を再現したものを、ハイビジョンの4倍の解像度を持つシステムを用いて、300インチの大きいスクリーンで紹介していて、画像でみると阿修羅像の模様や細かい表現がよりわかりやすく紹介されていた。

流されている映像をみるだけだと、この場所を良く見たいと思っても次に写ってしまうところがあるけど、最近は解像度も高く、本物を見るよりも綺麗だったりするし、わかりやすく、しかも本物ではそこまで近寄れないようなところまで近づけたり違った見方ができていいと思った。

最初の展示室の宝物とかも、実際のものはガラスケース越しで良くわからないので、映像の展示のほうが印象に残った。
ただ、映像でみると本物を見るというありがたみが、どうも薄くなってしまうし、展覧会を観に行く醍醐味みたいなものが変わってきてしまうように思うけど、、、

平日の開館時間も延長されるほどなので、混雑状況から比較的好いていそうな時間帯の金曜の夕方を選びましたが、結構な人の数でした。宝物類はガラスケース越しにみるのですが人が多くて、少しずつケース越しに進むとすごく時間がかかりそうなので、仏像を中心にみて、閉館時間に近くなった頃に改めて宝物類をみたりして、結局2時間半ほどかけて、展示を3周してきました。


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