2008年11月21日金曜日

星に降る雪/修道院 を読んだ

池澤夏樹著、星に降る雪,修道院(2008.3発行)を読んだ。

星に降る雪は、望遠鏡などの観測機器のエンジニアとして、神岡で働いている主人公のところに、過去に一緒に雪崩に巻き込まれた友人の彼女が、山の中の天文台などにいる理由や、それは雪崩に関係あるのか、その時になにがあったかを聞きに来る。そのときのことで心を少し閉ざした感じの二人が、温泉で一晩を過ごし、そのときのことを思い返し、星のメッセージとでもいうようなものを知人や主人公は受け取ったと感じていて、星に近いところに来たかったといった、不思議なことをいう主人公。彼女は、そんな空や星に向かわず、地面を這いつくばって生きるのが人生といい、思い出した以前の恋愛について語る彼女。
といった感じの話

さらりとした感じの文章に、星からのメッセージを受け取るという不思議な感覚を、宇宙探査の望遠鏡やカミオカンデが、電波やニュートリノを捉える様子に重ね合わせて表現される一方、対比として彼女の話がされていて、読みやすく、それでいて、なんとなく心にくる作品。
宇宙からのメッセージとか、そういった人智を超えたようなものをさらりと入れながらも、やみくもに信じるのでもないといった感じがして、よかった。

修道院は、数週間の休みができたのでクレタ島に休暇にきた主人公が、寂れた修道院の礼拝所の中を覗き、イコンを観ようとしたときに足をくじき、宿屋をかねたカフェのようなところで過ごすことになる。その店のおばあさんが、旅行者が足をくじいて宿屋にとまるのは、丁度50年前の出来事との関連を感じ、語りはじめる話が中心。
その話は、そのおばあさんの小さい頃、旅行者がやってきて町で過ごし、あるときから、なにかの償いのように、主人公がけがすることになった礼拝所を一人で整備して、その後、彼を訪ねてきた人との間で起きた出来事で、その弔いを知らせに神様が主人公をよこしたのだろうという話

こちらも全体としては、淡々とした感じで語られ、やはり過去の出来事をひきづりながら静かに生きる人の様子が描かれ、礼拝所を整備するところの話が少し冗長な感じがするのと、過去になにがあったかが、明かされるまでが少しじれったく、最後の方の話の展開は急な感じがした。
罪にさいなまれて生じた幻聴が、礼拝所の整備につれて、主の声のようなものになっていったこと、しかし、そのときの当事者である彼女が探し当ててきたことによって、悲劇になるが、店のおばさんとその弟以外には誰もしらず、静かに潜んでいて、それで主人公が使わされたというような、偶然といってしまえばそれまで、でもなにか運命もあるのではないかといったようなことを感じるものだったけど、こちらより、星に降る雪のほうが私の感覚にはあう感じがした。

0 件のコメント: