2008年12月29日月曜日

年収防衛 を呼んだ

森永卓郎著、年収防衛―大恐慌時代に「自分防衛力」をつける (角川SSC新書)(2008.11発行)を読んだ。

年収崩壊に続いて角川SSCから出版された本。基本的にまじめでいい人そうだし、ニュースなどにだまされないようにという観点でテレビとかで話を聞く分にはいいんだけど、新版 年収300万円時代を生き抜く経済学 (知恵の森文庫)など、いくつか本を出しているのは知っていたけど、本の内容としては、感覚的な話でいい加減な感じがしたので、買ってまで読もうとは思わなかったのだけど、友達が貸してくれたので読んでみた。

タイトルは年収防衛だとか、自分防衛力をつけるとかとなっていて、
章立てとしては、年収崩壊から年収防衛へ、年収防衛時代の働き方、モリタク流発想術、資産運用術、節約術、といった感じ。

どちらも、特に目新しいことが書かれているわけでもないし、章立てと内容の対応が明確でないというか、現状と自分の考えと方法がごちゃごちゃになっていて、全体的に、思いついたことをただ並べて関連するものをまとめているだけのように感じた。
この本自体が、ネットや雑誌に連載した記事を加筆修正してまとめているからだともおもうけど。

とはいえ、主張としては、
経済的合理性を追求し、弱肉強食の社会を勝ち抜こうとするのではなくて、
適当な距離感を保ち、お互いの愛情に満ちた社会を目指し、そこそこ働きそこそこ稼げばいい
ということのよう。

年収防衛とか、自分防衛力っているのは、年収防衛時代の働き方のところで、距離感を磨けとか、新卒で正社員になれとか、転職のペナルティを知らせているところや、後半の、モリタク流発想術でビジネスチャンスを見つけて、モリタク流資産運用術や節約術で、現状を乗り切れということ?という感じ。

本を売るために編集者などの意見が反映されるのだろうけど、売れそうなタイトルをつけて、他での連載記事をまとめて本にしましょうといわれて、かかれた本のように思い、気楽に引き受けてタイトルも気楽に決めてしまっている感じがするし、タイトルから期待される内容と中身があっていないのではないかと思った。

とはいえ、基本的な主張や、
バブルがはじけこれからの方向は、まじめに働く人が報われるまっとうな時代、
一生懸命働きたい人は働けばいいけど、多くの人はそこまで望まない、
金融業の給料は、海賊のような略奪行為で儲けていて、まじめに働き、互いに利益を配分していたら、ありえない金額で、バブルの崩壊と共に正常化していくべき、
芸術が技術に結びついて付加価値を生み出すようにする、
などの考えは賛成。

ただ、それを実行する手段については、自分を首相にしてもらえればそういう社会を実現するなど、あまりに楽天的過ぎて、実現性が感じられないと思った。
ようは、みんながお互いを助けあう幸せな社会を作ろうというのと同じで、だれも反対しないけど、どうするのという感じ。
もっとも、雇用を切るのではなく、ワークシェアし、トップの給料や配当を増やさずに、痛みを分け合うようにすればいいというような、方法も提案しているけど、そうなるようにみんなの考えが変わるように、法案を作る必要があるだろうし、考えを変えていく必要があるから、そうい考えを広めていいこうという話ならいいのだけど、それは年収防衛とか自分防衛力という話ではないし、そういう社会が本当に望まれるのかも、また別問題だと思った。

それに、年収300万円でも、十分生活を楽しめ、それには、ちょっとした工夫や節約も必要といっていて、
夢はある程度までやってみて、無理ならさっさとあきらめるとか、
こつこつ節約したり、無駄を省いたり、小銭を稼ぐなどして、必要なだけのお金を得る方法などをあげている。

そもそも、そういうことがみんな出来れば問題ないが、夢をあきらめきれない人や、こつこつとした節約ができない人がほとんどだと思うし、ある意味お金はいろいろなことの尺度になるから、要領よく稼いでいる人がいれば自分もと思いがちで、結局、みんながそこそこ働いてそこそこ幸せに生きるというのは難しいと思う。

イタリアやオランダのようにワークシェアして、働く時間を減らすように政治が持っていくというのも意見としてはあると思うけど、本当にそのような社会で機能できるかは、文化や宗教的な背景や価値観が異なるので、日本の社会の方向が本当にそれでいいかはわからないとも思う。

それでも、基本的な主張のようなことを、みんなが思えば幸せになるんだから、この考えを広めたいっていうのもあるのかもしれないけど、それって宗教の押し付けと構造は一緒で、やはり無理があると思った。

個人的には、好きなことを出来る範囲で自由にやっていくという、私の考えとほぼ同じ方向なので、いい意見だとは思うし、文中で参照された本、優雅な暮らしにおカネは要らない―貴族式シンプルライフのすすめのような価値観はいいと思う。
こちらの本のほうが、下手に年収防衛などといったタイトルではなくて、直接的でいいし、身の丈にあったお金(少ないお金)で生活を楽しむという価値観に主眼が置かれていていい本だと思う。
ちなみに、この本は森永卓郎氏が賞賛していて、特別序文を寄せていて、特に気にはなならなかったけど、先にこの年収防衛の本を読んでいたら、読まなかったかもしれないので、順番が逆でよかったと思う。


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