2008年10月4日土曜日

暗黒宇宙で銀河が生まれる を読んだ

谷口義明著、暗黒宇宙で銀河が生まれる ハッブル&すばる望遠鏡が見た137億年宇宙の真実 (サイエンス・アイ新書 41)(2007.11発行)を読んだ。

裏表紙に、「この宇宙は暗黒物質(ダークマター)に支配されている!」と大文字でハイライトされていて、銀河の母体となる暗黒物質にフォーカスしつつ、この宇宙創生の壮大な物語をつづってみたいと思います。(裏表紙文書より抜粋)とあるので、宇宙の質量をを説明するのに暗黒物質の存在が必要というような話を以前聞いてたことがあって、その辺のことに興味あった。また、先日読んだ最新宇宙学が、研究者の今の研究内容をつづるもので、わかりにくかったこともあり、この本は新書で、ハッブル&すばる望遠鏡が見た・・・とあって、写真も多く面白そうだったので読んでみた。

内容は、第1章は暗黒の宇宙ということで、宇宙は暗いのか?ということを端緒に、星の光度や距離などの基本的な知識、天の川銀河の基本構成や、星団や星雲、他の銀河などについて解説されていて、第2章では暗黒宇宙の誕生ということで、銀河間の距離や宇宙の膨張、膨張が始まった初期ビッグバンの様子に、ビッグバンを起こすことになるインフレーション理論などが、望遠鏡による観測結果やアインシュタインの宇宙方程式や重力以外の力の統一理論などから得られてきた様子が解説され、第3章は銀河宇宙の誕生として、星やブラックホールに銀河の生成の様子について、ハッブルやすばる望遠鏡での観測結果などを交えて説明され、ダークマターが想定され始めた経緯から観測結果による分布の測定結果までが解説されている。

この宇宙は暗黒物質に支配されている!と裏表紙にある割りには、1章で、宇宙の質量における割合が出てきた以降、3章の最後の節で、観測結果を説明するために暗黒物質の仮定が必要なことや、暗黒物質としてはニュートラリーノという粒子が候補としてあがっていること、ダークマター観測結果など、この本の主眼といえる部分がようやくでてくる。
最も、基本的な話やそれまでの経緯を踏まえないと説明にならないのはしかたないと思うが、、、
しかし、宇宙の質量密度のうち、通常の元素が占める割合がわずか4%しかなく、暗黒物質が22%で暗黒エネルギーが74%だそうで、そんなに96%がよくわからないもので成り立っているとは知らなかった。また、インフレーション理論についても、名前を聞いたことはあったけど、ビッグバンとの関係など、概要が把握できてよかった。

暗黒エネルギーがなにかとか、質量密度割合などの数値は観測結果などから得られているんだろうけど、どのように得られているのかとか、他にもなぜそうなるか説明がなかったり、仮定と確定した事の区別がはっきり読み取れない部分があるのが少し気になったけど、わかりやすくするためには仕方ないようにも思った。

文章も、ところどころで、質問とその答えという形で、宇宙の構造が判っていくような形になっていたり、簡単な式で説明できるものは式を用いて論理的に説明されていて、多少複雑なものはコラムとして理解の助けになる知識や用語の解説がされたりしていて、技術的な内容の解説の深さと読みやすさのバランスがとられていて、宇宙の生成から誕生までのダイナミックな様相や、暗黒物質について判ったような気になれる本だと思った。

新書版で気楽に読め、かつ、最新の情報まで含めた、宇宙の成り立ちを知るための入門書として良い本だと思う。

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