2008年7月26日土曜日

村上隆のポスター展

(別サイトと同じ内容)
昨日、半月ぶりくらいに都内にでかけ、ギャラリーや美術館をいくつか回ってきた。
最初に広尾から有栖川公園のちょっと先までいったところにある、kaikakikikiギャラリーに、村上隆ポスター展をみてきた。
16億円フィギュアやなので、なにかと話題に上る村上氏の作品をあらためて、まとめて見るのは初めてで、テレビや雑誌で目にする作品からは、あまり好みの作品ではなかったのだが、「マイ・ファースト・アート」シリーズということで、ポスターといった平面作品がそろうので、見に行ってみる事にした。
相変わらずの、ミッキーのまねようなものや、カイカイ、キキのキャラクターや達磨やら、かわいい感じのキャラクターというかマークが、ごちゃごちゃっと埋め尽くした感じのものなどが2001年から最近までのものを順に展示されていた。
作家の署名やエディション入りのアートを、比較的安価な値段で提供することを目指す一方、箔などの新たな素材を用いて、より豊かな表現を追求しつつ、妥協することなく、日本の高い印刷技術を用いて、高いレベルの作品作りを行った。というようなことが説明されていたが、村上氏の作品は既存のアニメ文化などから切り抜いてきたものを、概念的に加工して、美術作品として位置づけることで、価値観を揺さぶり、新たな価値を生み出した点や、商業ベースと強くかかわることで、美術とデザインの境界にも揺さぶりをかけている点にあるような気がする。
それに、作品自身は美術作品というよりは広告などのグラフィックに近く、純粋な視覚的美しさといったものは、概念や価値観に影響を与えるために精密に検討されるとしても、ポスター上での髪の毛1本のずれを生じさせないととか、より豊かな表現を目指して新たな素材を用いながら、高い技術レベルでの印刷を行うというようなものとは思えず(グラフィックであるとしても自分の行いたい表現をする上での技術的な要望はあると思うが)、印刷技術者自身も最高のものを目指し、これまでの版画とは異なる、新しい価値観を創造した。というのはなにか方向が違うような気がした。
とはいうものの、達磨シリーズは、明るく楽しい感じになる漫画やアニメ的なキャラクター表現でも、全体的に暗い色調で金メラ状の背景に達磨の目の明るさが強調され、それなりに面白い作品で、実際に村上隆の作品をまとめてみたのは初めてであって、これまで、多少食わず嫌いのところもあった感じがした。

いづれにしても、作品そのものというより、美術作品や文化、商業の関係性や、概念、価値、といったものに揺さぶりをかけ、議論を巻き起こす作家であるのは間違いなく、作品のイメージが嫌いというだけで、食わず嫌いであったのを見直すきっかけとなった点ではよかった。


芸術起業論
村上 隆
幻冬舎

このアイテムの詳細を見る

0 件のコメント: