2008年9月4日木曜日

考える細胞ニューロン を読んだ

櫻井芳雄著「考える細胞ニューロン―脳と心をつくる柔らかい回路網 (講談社選書メチエ)」(2002.5発行)を読んだ。

内容は、心を生み出す脳の働きを知るために、脳を構成する主要な細胞であるニューロンとその働き、ニューロンが構成する回路網の動きなどについて書かれていて、複数のニューロンが参加して造られる機能的なセル・アセンブリにより、ダイナミックに変化する回路網と情報処理が行われることを説明し、記憶や個性の表れ方についても、解説されている。

比較的新しい知見も含めて、説明がされていて、一般向けに平易に書かれていて読みやすかった。
脳に関する他の本では、単純化されたニューロンについて、その構成や機能を書かれていることが多いが、この本では、ニューロン自身、いろいろな形態があり、非常に多数のシナプス結合を持ち、複雑な化学反応でシナプス間の情報伝達が行われていること、そして、単一のニューロンがいろいろな情報処理に関わることなどが書かれていて、ニューロンが、その複雑さと可塑性について、これまで思っていた以上に柔軟でダイナミックな変化を行う細胞であることを知った。
また、脳の機能地図なども、それほど明確に分かれているわけではなく、多数の人の平均をとるとそのようになるというような感じで、脳の構成や働きは思っていた以上に一人一人異なることもわかった。
脳の情報処理をする単位とも考えられる、複数のニューロンが参加するセル・アセンブリによるダイナミックな情報処理については、まだ、明確になっていないところが多分にあるようだけど、ネットワーク自身が多数のセル・アセンブリを造って記憶や認知、判断などを行うというダイナミックで柔軟な構成で脳が機能しているという考えが述べられていて、まだまだ、脳の動作など不思議な点がたくさんあると思った。
また、脳は非常に柔軟なネットワークもち、記憶や判断を行いながら、逐次、構成自身も変化させていくものであり、年をとっても、その変化は続いていて、これまで知られていた以上に脳の可塑性が高く、このことを示す報告が近年増えていることも判り、年取っても脳に刺激を与えることで、まだまだ、脳の機能を高めていくことは出来そうだと思った。


最後の方は、個性のはなしに絡んで、IQなど測定方法自身の問題を考慮せずに評価をしてしまうことや、権威主義に陥ってしまう硬い考えの人に対する、非難というか、問題をあげつらっている感じもするが、全体としては、最近の脳に関する知見を含め、脳の働きに関してわかりやすく書かれていて、良い本だと思った。



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