2008年9月21日日曜日

現代美術の教科書

美術手帳編集部編集、現代美術の教科書(2005.3発行)を読んだ。

前回読んだ、現代アートナナメ読みは、現代アートがコンセプチュアルな側面や能動的な社会との関わりが強くなっていることから、アートそのものの見方というより文化的社会的側面とのかかわりの説明みたいなところがあったため、どうも作品を中心に考えてしまう(考えが古いのか?)ので、他に現代アートの入門書のようなものはないかと思って、この本を読んでみた。

内容は、章立てとしては、教科書の名にふさわしく、序論、概論、演習となっている。
序論は、谷川渥氏により、現代美術の3D[立体]観測-新しい物語としての美術史のために-と題して、20世紀の終焉との関わり、イズムの変遷からアート群への変容といった、大きい物語から多数の小さな物語の氾濫ともいえる方向性や、目的論的な芸術の終焉が語られても芸術自身について語られるべきことは多数あり、いろいろな見方があるというようなことが述べられている。
概論では、現代美術マスターピース・リンク-セザンヌからマシュー・バーニーまで66作品をつなぐ11の新しい流れ-と題して、近代から現代美術までの流れを複合的(立体的)に捉えるため、絵画と写真からビデオ・アートへや、「抽象」の場所、ポップの系譜、壁画運動とグラフィティアート、などの11のトピックについて、それぞれ異なる執筆者が現代アートと過去の作品をリンクさせた解説を行っている。
後半の演習の章では、アート鑑賞術・入門-50の傑作を見る×読む◎空想ギャラリーツアーガイド-と題して、STEP1で、対話型・作品鑑賞シミュレーションとして、ゲルハルト・リヒターや奈良美智、フェリックス・ゴンザレス=トレスなどの5つの作品に対し、対話形式で作品や作家の特徴や、社会的、文化的背景や、作品の生み出す価値観などが語られている。続くSTEP2では、リンク型・比較鑑賞ワークショップと題して、ある作品と別の作品について、作品の特徴や意義などについて、共通点や相違点などの比較・対照して、語られている。

構成的には教科書らしいが、内容はかなり難しく、言っていることがよくわからなかった。
序論から、教科書といった入門的なイメージから考えると、難しく、現代美術の美術的変遷の中での位置づけと、現代芸術の過去のものからの変容、現代アートは言葉で語られ、見方を形成し、いろいろな見方を楽しめばいい、というようなことを言っているような感じはするけど、違うかもしれない。
さらに概論では、現代アートの作品を過去の作品などとの関わりを評論しているが、言葉の意味が良くわからないかったり、参照される思想や文化、芸術論自身わからなかったり、作品の意図をなぜそこまで考えられるのかわからないと感じる部分も多かった。
演習部分はこの本のなかでは、比較的わかりやすいというか、他の章に比べるとなんとなく言っていることがわかる感じのする部分もあったが、それでも、文章が難しく解説や内容が理解できるとまでは言い切れない。

とは言うものの、現代美術作品について、写真入りでの解説となっているので、評論の流れを追ったり関連知識を見につけることで、ある作品に対してより多く自分自身で語れるようになるような感じもして、そういう意味で現代美術の教科書なのかも知れない。
また、多くの評論家や研究者が解説しているため、文体も異なり、わからなさの程度も異なって、なんとなくわかったような気がするような評論もあり、良くわからないなりにもいろいろな見方を知れたような気もする。ただ、難しいため、読み終わったあと何が書いてあったか思い出そうとしても、漠然とした読後感があるだけで、うまく思い出せない。

現代アートを理解したり、楽しむっていうことは、ある作品に対し(一種のジョークのような、パロディのような、一発ギャグのような作品に対しても)、文化文明論や哲学、思想などを踏まえた理屈付けをして、美術史や社会状況の中に位置づけ文脈をつくり出していくといった評論作業?を自分で行うことで、一種の知的ゲームのようなものということなのかという感じがした。

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