2008年8月16日土曜日

ハリガネムシ

第129回(2003年上半期)芥川賞受賞作、ハリガネムシを読んだ。
主人公は、どうでもいいようなソープ嬢と関わって、だんだん破壊的な暴力行為に目覚め、一方、暴力行為に巻き込まれ、堕ちていくような話。
どうも、最近は精神が弱っているのか、暴力的な部分を読むと痛々しくてつらいところがあって、その部分の印象が強くなってしまって、ストーリ全体のイメージが薄まってしまう。
ソープ嬢やヤクザが属する破滅的な暴力的世界へ直接入っていくような作品ではないが、主人公の内なる乱暴な気持ちがソープ嬢との関わりのなかで明確になっていく一方、主人公は高校の倫理の先生であったり、高校では以前にリンチ事件をもみ消していたり、最近のリンチ事件の生徒指導をしていたりで、表向きの正義と内に秘めた悪との対応であったり、正義の表面的な部分などを揶揄しようとしているような気もするけど、今ひとつ明快さというか、訴えるものが少ないように思った。
蛇にピアスを除くと、このところ、さらっとした淡白な感じの小説を多く読んでいたせいかもしれないけど、話の展開がうまくつながらないっていうか、つながらなくても妄想シーンが広がったりして、読んでてイメージが膨らむようならいいんだけど、どうも読んでいる流れが止まるというか痞えてしまうような感じで、話のつながりが悪い感じがした。
それでも、人間の内に秘められた暴力の表れや、暴力的行為への傍観ー参加、加害者ー被害者など変化して展開し、人の内面の変化や、激しい描写など、なんていうか、私の持っている芥川賞のイメージに当てはまる作品だった。

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