2008年8月25日月曜日

永遠の旅行者

経済小説「永遠の旅行者 上・下」を読んだ。

Perpetual Traveler(PT,永遠の旅行者)とは、どこにも定住地を持たずに、旅行した状態を続けることで、住民票を除き税金を合法的に払わないという(各国の法の変更などによって、税金の問題は変わるが、、、)生き方で、この小説では、弁護士をやめPTをしながら生活する主人公が、引き受けた遺産相続に関する依頼を遂行するなかで遭遇する出来事を、贈与税や相続税、海外や国内、個人や法人などの資金の流れや課税方法などを交えてミステリー調に書かれている。

著者の橘玲は、経済というか税金や社会保障費などの国と個人の金の流れのあまり表立っては言われていない歪や、それを利用した儲けの可能性、合法で情報不足から損をしないようにする資金の蓄え方などについて、一般向け投資本やフィクションの形にした経済小説を書いている。以前、「お金持ちになれる黄金の羽の拾い方」を読んだことがあり、税金の知識や情報収集力の差が資金を増やす上で大きいことなどが書かれていて面白かったので、小説にも興味がわいたので読んでみた。

この小説は、経済や法律を駆使した物語や経済知識を得る取っ掛かりとして考えると、ミステリー調のストーリーにハワイや伊豆、ニューヨークなどの生活環境や雰囲気がわかるし、経済用語が多く出きて、オフショア市場やタックスヘイブンを利用した税務上のテクニックなどが、詳細に書かれており、課税や節税はこのように考えるのかと勉強になるように思う。(あくまでもフィクションで金融機関は基本的に架空、内容はあくまで創造上のもので、コメントも私的見解との但し書きはあるが、、、)最も、私の場合税金対策の効果があるほどの資産があるわけではないのだが、、、

ただ、小説として考えると、上下2冊にわたる大作となっていて、風景や状況説明が丁寧といえば丁寧なのだが、冗長な感じで、そんなところの描写はどうでもいいから早く物語をすすめてほしいと読みながら感じるところが多かった。特に第1章は登場人物やその背景の書き込みをしているのわわかるけど、長すぎて少し飽きてしまう感じだった。
ストーリーとしては、遺産を税金を払うことなく孫娘に相続させたいという依頼が舞い込み、その依頼者の息子と孫娘は外国へ行方をくらましたのち孫娘だけを依頼者が連れ帰って息子の死亡宣言をしていたり、依頼者は病気で入院していて、その娘は精神が崩壊しかけて閉じこもっているし、さらに死亡宣言された夫は多額の借金を抱えて行方をくらましていたり、その不良債権をめぐって暗躍する人がいるなど、様々な登場人物がでてくる。また、娘がさらわれたり、借金や娘の父などをめぐって隠された謎がでてくる。さらには、ニーチェのツァラトゥストラはかく語りきを引用したり、ストーリー展開をいろいろと工夫している感じもするけど、このところ、続けて読んでいた小説と比べると、丁寧な描写だが説明書を読むようで、感情をゆさぶるというか、引き込まれるようなすごさや面白さは少し足りないと思った。

とはいえ、このようなPTとして時々都市によりながら、南の島や海などを渡り歩くような生活が、丁寧に書き込まれていて、このような生活ができたらいいと思った。最も、一人でずっとふらふらしてると老後が心配。PTできるようならお金もあって老後も安心かもしれないけど、、、

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