2008年8月17日日曜日

スティル・ライフ

第98回(1987年下期)芥川賞受賞作である「スティル・ライフ」を読んだ。
内容は、主人公がバイト先の工場で、どこかつかみどころのない佐々井と知り合い、システマティックな株の売買を、表向き主人公が行う形で手伝う3ヶ月の間に交わされる会話や主人公の空想によって、独特の世界がつむがれたもの。
読後感としては、本文中にも、世界がどこかに上昇していくようなイメージや、「高い軌道のうえから自分たちを見ていたみたい」とか、「別の星から送り込まれた」、といったような表現に引きづられたわけではないと思うが、静かに離れたところから世界を見るような、独特の感覚が表現されているように感じた。この静かに観察するような感じが、タイトルのスティル・ライフ、訳すと静物?にあらわされているのだろうか?
この感じは別の言い方をすると、上からというか離れたところから物事を理知的にみるというか、理系的(理系、文系とかって分け方はあまり好きではないでけど、、、)なというか、どこか突き放したような感じで、静かに美しく広がり進行する世界が語られているイメージ。
読み手が引き込まれていくような激しさとは違って、静かに迫ってくる感じで、一緒に収められている、ヤー・チャイカにも共通しているように思え、作者の持つ世界観や文章表現によるものと思うが、この感じは私好みだと思った。
このところ、芥川賞って、特定の型にはまるものではないものの、こんな印象を与えるものだったっけ?という感じがしたけど、この作品は受賞作品にふさわしい感じがした。とはいうものの、この作品はすでに20年以上前のものになるから、最近の賞の傾向というか、文学の方向性についていけてないというか、理解できていないだけなのかもしれないと思ったりしてしまう。

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